シルバービレッジ西東京の庭には
手作りの風鈴が涼しげな音を奏でております。
チリ~ン チリ チリ リンリン・・・・
緑の多い庭に、良く似合う夏の風物。
ほっと、顔もほころんでしまいます。
Writer:田中 昇
*この物語はフィクションであり、物語に登場する人物・団体等
は全て架空のものであります。
となりの芝が青く見える・・・
近くを捨てて遠くに求める・・
作:なおとっち
第15話 ケアマネージャーの仕事ということ
ガチャ。
「おはよう」
「おはようございます。あれ、平さん、焼けてますね」
「あははは、久しぶりの連休だったからね、女房と子供で由比ガ浜に行ってきたよ」
「そうでしたか」
「やっぱ湘南はいいねー、はい、おみやげ」
「有難うございます。あ、江の島水族館ですか」
「そうそう」
「ところで平さん、早速なんですけど…」
プルルルルル・・・・
「はい、支援センターです。はい、ええ、ああ、そうですか。今おりますので、少々
お待ちください。―――平さん、小暮さん、という方からですが。利用者さんに
いましたっけ?」
「小暮さん?ああ、先週介護保険の問い合わせがあった人だ」
「新規ですか?」
「新規というか、電話相談のみだったけどね。分かりました、かわりましょう。
―――もしもし、お電話かわりました、平ですが」
≪ああ、たいらさん、あのねー、もうあしこしがよわってるから、へるぱーさんを
たのみたいんだがねー、あしたからおねがいしますよ≫
「あ、いやいや、小暮さん、この間も申し上げましたけど、認定は受けておりますか?」
≪ああそれね、うけてました、このあいだ、たんすのひきだしからでてきました≫
「ああそうでしたか、で、認定はいくつでしたか?」
≪ろっきゅうです≫
「へ?」
≪だから、ろっきゅうでしたよ、わたしもしらないうちにうけてたんだねー≫
「あのー、小暮さん?」
≪じやあ、たのみましたよ、たいらさん≫
ガチャン。ツッーツッーツッー。
「え?もしもし、小暮さん、もしもし」
「どうしたんですか?」
「どうもこうも、一方的に言って切っちゃったよ、まだ住所も電話番号も聞いて
ないし」
「あら、認定は受けてるんですか、何か6級って言ってませんでした?」
「うん、おそらく、障害手帳か何かと勘違いしてるね、あれは」
プルルルルル。
「はい、支援センターです。あ、お世話になっております。少々お待ちくださいませ。
平さん、八雲さんからです」
「はー、また何かあったね…。―――お電話かわりました、平です。
いつもお世話さまです。どうされましたか」
≪あ、平さん、あのね、今度の担当の方、つっけんどでね、かえてほしいんですよ≫
「ああ、その件ですけど、この間もお話ししましたけど、
私どもではどうしようもないんですよ・・・
それは地域包括支援センターに言っていただかないと」
≪なんで、かわってしまったんですか、平さん、本当のことを言ってください≫
「いえいえ、ですから、八雲さんは予防給付の対象になったんですよ、
認定は要支援2になってますでしょ。そうなると私どもの担当ではないんですよ」
≪そうなんですか、でもおかしいじゃないですか、私はもともと、1だったんですよ。
数字が増えれば、それだけ体が悪いってことでしょ、
そうなれば平さんの担当でしょ。
平さん、本当は私のこと嫌いなんでしょ、厄介者と思ってるんでしょ≫
「違いますよ、1って言っても、それは要介護1でしょ。そうなると…」
≪わかりました!≫
ガチャン。ツッーツッーツッー。
「あ!……もう」
「出社そうそう、大変ですね」
「全く…ふうー、さて、気をとりなおして書類整理するか。ん?なんだこれ?」
「え?ああ、平さん宛てのメモですか、凄い量ですね…」
「はあ……、ええなになに【 包括の白石さんから℡あり
八雲さんのことでC/B(コールバック)お願いします とのこと 】
ああ、今の件かな…ええと【 橋爪さんの娘さんから
橋爪さんがまた車を運転しているとのこと
今日ガレージを壊したので、何とか免許をとりあげるよう説得してください とのこと 】
また、運転しだしたんだ、全くもう…、
ええと 【 ニコニコ訪問介護から土曜日にヘルパーが訪問したら、
水谷さん留守でした キャンセル料発生するのですが、その件で
息子さんがご立腹しています。何度も説明しましたが、
市にクレームをすると言っています。
何とかしてください とのこと 】知らんよ、そんなこと。ニコニコさんで対処してよ・・・
もう…ええと 【 横川病院のMSWから 星崎さんですが、
来週ムンテラをします。やはり透析になってしまう とのこと。
奥様の心配は退院後週3回の外来透析に連れていくのは大変との話あり
星崎さんに連絡をとってください とのこと 】
そっかー、星崎さん、透析になってしまうんだ。
となると、週3回の介護タクシーか、民間輸送しかないかなー」
「透析ですか、星崎さん大変ですね。そういえば、この間、ひのでクリニックの人が
パンフを持ってきてましたよ。ええと、たしか、無料送迎って言ってましたけど」
「ほんと?そっか、じゃあそれでいただき。退院後はそこの外来にすればいいや。
そしたらまずは、横川病院に一報いれておかないと。
よし、次、
ええと 【 寺松さんから 泉訪問介護のヘルパーは全く何もしない。
草むしりをしてくれないので、土曜日に自分でしたら、腰を痛めてしまった。
どうしてくれるんだ とのクレームあり ※ その後3回連続℡あり 】
何だこりゃ、クレームじゃないでしょうに」
「寺松さんからですか、困ったものですね、あの人には」
「ヘルパーさんはできないから、人材センターさんに頼んだんだけどね」
「でもダメだったんですか」
「お金が多少かかるからね」
「近くに息子さん、住んでません?」
「うん…でも、色々あるみたいで」
「そうですか…。でも平さん、休み明け早々大変ですね」
「うん、まーこれがケアマネの仕事だからしょうがないよ」
「いっそ、転送でも良かったんじゃないですか」
「いや、転送するとおちおち休めないからね、こっちが倒れては元も子もないし」
「それでもやめられないんですか、ケアマネって」
「そうだね、不思議とこれがやめられないんだよねー。自分でも分からないけど。
ええと最後がこれか。ええなになに。あ、留守さんだ。【 留守さんのお嫁さんから
土曜日の夜に救急車で医療総合センターに搬送され、そのまま入院となりました。
やすらぎの森とすこやか福祉用具にはまだ連絡とっていません。連絡をお願いします。
退院が決まりましたら、また連絡します とのこと 】ええ!!留守さんが入院?!」
「留守さん、入院したんですか?」
「うん、土曜日の夜みたいだけど。それも救急車だって」
「ええ?一体何があったのかしら」
「うん、奥さんに電話してみる」
「そうですね、心配ですね、留守さん」
「うん…大変なことになってなければいいけど…。あ、もしもし……」
色々なご利用者様が、定年したら旅行に沢山行って…と
定年後の楽しみと考えていましたが、実際に定年してあまり旅行もいかずうちに
夫婦のどちらかが体調を崩してしまい旅行に行けなくなった現実を経験され
定年してからではなく若いうちにいきなさいと話してくれます。
しかし!諦めるのはまだ早い!身体状況に不安を抱えている方をサポートする
という方々がいらっしゃることを私自身も最近知り現在利用者様と話をしている最中です。
申し込みは所定の申し込み用紙に必要事項を記入するだけ
(主に普段の様子)でその方にあった旅行先や旅行内容を提案して
導いてくれるのです(^O^)凄く便利で安心です!
Writer:中井 紫鶴
【特定非営利活動法人 日本トラベルヘルパー協会ホームページより】
トラベルヘルパー(外出支援専門員)は、
ご高齢の方、お身体の不自由な方が、
安心して積極的に「いえのそと」に出られるようお手伝いする人です。
その方の手足となって、その方の気持ちにそって。
トラベルヘルパーには誰でもなれます。
このやさしさの連鎖を、笑顔の連鎖を、一緒に拡げていきませんか?
笑顔の連鎖を増やすためには、
まずあなたが笑顔になることが最初の一歩です。