*この物語はフィクションであり、物語に登場する人物・団体等
は全て架空のものであります。
第21話 紅 仁義(くれない じんぎ)さんが登場ということ
「みなさーん、今週1週間は敬老会記念ということで、曜日ごとに盛りだくさんの
企画がありますので、是非楽しんでいってくださいねー」
パチパチパチ。
「おうっしー!酒は出るんじゃろうなー」
「あ、室井さん、いい質問ですねー。もちろんですよー、じゃんじゃん呑んで楽し
んでいってください。あ、それからみなさーん、今日からですね、新しい方が、
入りましたー。ご紹介致しますねー。紅 仁義(くれない じんぎ)さんでーす!」
パチパチパチ。
「では、紅さん、皆さんに一言お願いします」
「おう、くれない!頑張れやー!」
「ちょっと室井さん…静かに」

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パチパチパチ。
「はい、紅さん有難うございました。皆さん、よろしくお願いしますね」
「おう!仲良くしてやるぞー!くれない!こっち来て、さー呑め!」
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「おお。呑め、呑め。お?ところでお前、その指どーしたんだ?」
「………」
「………」

「あ、あははは、もう、室井さんたら、いいじゃないですか、そんなことは、ね。
さ、紅さん、の、呑みましょうね」
「え?主任さん、聞いちゃまずかったか?くれない、別にいいんじゃろ?」
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「若気の至り?」
「も、もう、室井さん…若気の至りは若気の至りなの、ね、あははは」![]()
「ふーん」
「あ、あははは。そうだったんですか、あははは」
「そうか。わしはてっきり……」
「さー室井さん!あっちに行きましょう!おもしろーいのがありますよー!
中村さーん!室井さんをお連れしてー!さ、どうぞどうぞ!」
「おわ!な、なんじゃ?」
シュッシュッシュッ。
「ふー。あ、すみませんね、紅さん。室井さんも悪気があって聞いた訳ではないので」![]()
「い、いえ、私は別に…」
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「あ、やっぱり……あ、いえいえ、ああ、そうでしたか…」
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「は、はあ…。あ、と、ところで、外に黒塗りの車がいっぱい止まってますけど、
あれはやっぱり…」

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「は、はあ、やっぱりね…。そう…でしたか…。あははは…えぇと…あ、紅さんって
ケアマネさんから戴いた情報ですと、要介護5になってましたけど、け、結構、
お元気ですよね…」
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「は?」
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「そ、そうですね…ま、トップといいましょうか…」
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「そ、そうですね…ま、正確には市が認定しますけどね…」
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---回想 はじまり---

「おい、われー!親父の認定が幾つか言えんちゅーことか、おう!」
「は…はい…あ、あのう、私が決める訳ではなくってですね…それは市が…」
「それはさっき聞いたわい!」
「は、はい!」
「じゃあー聞くがな、われは一体何者なんじゃ、おう!」
「は、はい!ですから、私は市から委託をされた調査員でして…」
「おう!親父にさんざん、立てだ、座れだ、歩けだ、腕をあげろだの、おう!
さんざんやらせておいて、それで今の答えでええんかいのー、おう!」
「は、はい!」
「それにだ、われー親父に質問しておいて、のう、日付がどうじゃ、ここは
何処じゃ、とあれこれ聞いておって、おう、われは答えられん、て筋が通る
んかいのー、おう!」
「はい!」
「親父は、その認定なんだらが幾つになるか、聞いておるんじゃ、答えてつかー
さいな、のう」
「は、はい…。わ、分かりました…で、では、これはあくまでも私の独り言です
ので、それでよろしいでしょうか。私は紅さんには言ってませんので、あくまで
も、私の独り言ですから」
「分かったわい、はよう言いや」
「は、はい…お、おそらく、このチェックですと、よ、要支援、くらいかなーと」
「なにー、要支援だー?おう、その要支援ていうのは、トップかいのう」
「ト、トップと言いますと…」
「一番か、と聞いてるんじゃ!」
「あ、い、いえ、あのう、何処をトップとみるかによってなんですが、まーそうです
ね、認定では、い、一番軽いほうかと…」
「なんだー!」
「はい!」
「われー!親父が一番軽いっちゅうことか!おう!何処が
どう軽い人間なんじゃ!おう!」
「い、いえ決して人間性とかではなくってですね…」
「やり直せ!」
「は?」
「トップになるよう、やり直さんかい!」
「は、はあ…い、いえ、あのう…それは…」
「親父はトップがええんじゃ!やり直さんかい!」
「は、はい!」
---回想 おわり---
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「…………」
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「…………そ、そ、そうですね…は、はは…」
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「は、はい!こ、こちらこそ!よ、よろしくです…」
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「あ、あははは…わ、私は大丈夫です…はい…お気遣いありがとうございます…
あははは…た、楽しくやりましょうね…紅さん…あはははは」
